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好きなこと(同人)について気儘に語りつつ、 過去に書いた小説なども更新予定。
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分岐点(蔵馬、海藤)
2008.10.04 (Sat)

南野秀一の高校卒業後の進路について。
ある休み時間の二人のお話。

 


「南野、お前あのうわさ本当なのか?」

 

教室で幽助たちの近状について話していた海藤が、突然こんなことを聞いてきた。

 

「あのうわさって?」

「・・・就職するってヤツだよ。」

「あぁ、そのこと。」

 

おれは内心「またか」と溜め息を吐いたが、表面には出さなかった。

 

「で、実際どうなんだよ。進学する気はないのか?」

 

幾度となく先生から言われた言葉が聞こえた。最もその意味は違うが。

 

「進学する気はないよ。おれは義父さんの会社に就職する。」

 


この3月に高校を卒業するおれたちは、人生を左右すると言っても過言ではないほどの分岐点に立っている。

大学に進学するか、専門学校に行くか、就職するか。

色々な選択肢がある中で、おれは≪就職≫というのを選んだだけだ。

自分達には関係ないのに何故か周りは首を突っ込んできて、騒ぎを広げ問題を大きくする。

それによって話題の中心になってしまうおれのことも少しは考えて欲しい。

好奇の視線の中、学校生活を送るのは居心地が悪すぎる。

先生方もおれなんかを構うより他にやるべきことはたくさんあるはずだ。

おれを説得するのは時間の無駄でしかないということに、いい加減気付いて欲しい。

 

「就職か。お前が進学しないなんて、誰も思ってもなかったから大騒ぎしてるんだろうな。」

「そうみたい。先週の火曜日なんか進路指導の先生に一時間くらい説得されたよ。」

「・・・大変だな。まぁ、おれには直接関係ないからいいけど。」

「そう言えるお前が心底羨ましいよ。

 先生もまだ進路が決まってない人と面談した方がよっぽど効率いいのに。」

 

そこまで言ってため息を吐きながら机に突っ伏した。

隣ではおれの様子に少し困ったような海藤の気配がする。

おれがいつもよりしゃべったことが珍しかったのだろうか。

 

「お前があからさまに愚痴こぼすなんて珍しいな。」

「自分の予想以上に参ってるからじゃない?あそこまでしつこいと精神的にくるよ。」

 

進路希望調査書を提出してから毎日、放課後、昼休み、色んな先生から呼び出されると言うと

海藤もげんなりした表情を見せた。ちなみに提出したのは約一ヶ月前。

 

「何て言うか・・・ご愁傷様。」

「ほんと『ご愁傷様』だよ。」

 

おれは本日何度目か分からないため息を吐いた。

 


「なぁ、南野。何で進学しないんだ?」

 

これも毎日毎日先生方に言われる言葉のひとつなので、答えるのも最早習慣となっている。

理由なんて単純なことだ。

 

「進学までして学びたいことなんてないから。」

 

この学校内で一番長生きしているおれは、多分どの教師よりも多くのことを知っているだろう。

視野が広がると言われるが、おれとしては十分広い視野を持っているつもりだ。

そうでなければ魔界と人間界を行き来する生活に順応できるはずがない。

 

「人間界は魔界と違って平和だから、ある程度安全に暮らせるから好きだけど、学びたいと思うことはない。

 『ヒトの心理』っていうのにも興味はあるけど、それは人から教えてもらうより自分で体験した方が良いから。」

「確かに大学なんかで教えてもらうのは教授によって違った意見があったりするからな。」

「まあね。それともう1つ。」

「・・・お前のお袋さんのことか?」

 

海藤にはお見通しってわけか。でも・・・

 

「半分正解だね。今は母さんだけじゃない。秀一もいるし義父さんもいるから。」

 

一番の理由がこれ、家族のことだ。

進学するとなれば、授業料が必要だ。

大して学びたいものもないのに、お金を払ってもらうわけにはいかない。

まあそう言うとお前なら奨学金で生活できると言われたが、そういう問題でもない。

 

そして何より就職することで独り暮らしの正当な理由が出来る。

最近『南野秀一』の肉体に妖狐の力が戻りつつあり、バイオニズムの周期も短くなってきている。

妖怪のおれがいればただでさえ危険なのに、こんな状態のおれが傍にいればさらに悪い影響を与えかねない。

独り暮らしをすれば、そんな心配もしなくていいし、家族の目を気にするなんてこともない。


と言うのは、おれのところには盲目の暇人の使いや、三つ目の怪我人が『深夜』に訪ねてくるから。

(確かに昼間に来られても困るが、それなら『夜』にすればいいものを何故わざわざ『深夜』を選んで来るのか。

 これは彼らなりのおれに対する小さな復讐のつもりなのだろうか。

 彼らを弄んでいる自覚があるため強く言えないが、本当にあれは嫌がらせに近いものがある。)

 

「でも、お袋さんや親父さんは反対してるんじゃないのか?」

「いや、まだ話してない。」

 

おれがそう言うと、海藤は目を丸くして驚いた。

 

「話してないって・・・。進路希望って印鑑とサイン必要だったよな?」

「うん。でも先にサインしてくれて、自分の行きたいところを書いて出しなさいって言われたから。」

 

最も、おれが就職を希望していることなんて考えてもなさそうだったけど。

 

「話したら色々と揉めるだろうな。」

「・・・それはほぼ確実だね。」

 

おれの溜め息を掻き消すように、無機質な予鈴が鳴り響く。

それを合図にみんな自分の席に戻っていく。この音ひとつで大勢の人間が動くというのが不思議だ。

音で生物を支配できるのか、今度魔界に行ったときに試してみよう。

くだらないことを考えながら、ふとあることを思い出し、自分の席へと戻っていく海藤を呼び止めた。

 

「海藤、言い忘れてた。おれが進学しない理由。」

 

海藤は先程まで座っていた席に戻ってきた。

本鈴まであと4分もある。それだけあれば充分話せる。

 

「まだあったのか。・・・どんな?」

「おれ就職したことないから。」

 

海藤はおれの言葉をよく飲み込めていない様子だった。

 

「おれ魔界で暮らしてたときも合わせて軽く二千年は生きてるんだけど、その中で『就職』したことないんだ。

 進学はこの高校入るときに経験したから、今度は『正社員』になってみたいんだよね。」

 

おれ今まで犯罪者だったから。

そう笑いながら話すと、海藤は半分呆れ半分笑いながら言った。

 

「そういうところ、お前らしいな。『初めての就職』で失敗するなよ。」

 

これからの人生を大きく左右することになる分岐点に立っているおれたちの未来はまだ見えない。

だけど、これだけは言える。苦笑している海藤に、自信満々の笑顔で言ってやった。

 

「ねぇ、海藤。このおれが失敗するとでも思ってるの?」



◆◆◆◆◆

 
こういう蔵馬が理想。
失敗なんてそうするもんじゃありません。だって蔵馬だから。

 

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緑都(ろくと)
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自己紹介:
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銀魂(沖田)
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◆嗜好◆
好きキャラ=受け。
CPなしも好き。
好きキャラが女性に好かれると嬉しい。
基本的に天才気質の人が好き。
王道より茨カプが好き。
リバは受け付けられない。
詳しいCPなどは私事の過去の経歴をどうぞ。

◆その他◆
本命はナマモノ。すみません。
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